Alpine Yudini

クライミングやスキーの記録を書いていきます。

カミホロでのアルパインクライミング・レッスン

◆11月 化け物岩 左ルート

いよいよ北海道でも冬季アルパインのシーズンが始まった。

まずは足慣らしということで、化け物岩の左ルートへ行く事に。

噂では聞いていたが、尋常じゃない寒さ(11月なのに−15度)でシーズンインの寒さに慣れていない体にはかなりシンドい。風も相変わらずだ。

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プロテクションも写真の通り、もろい積み石が重なったようで、思うようには取らせてくれない。数ヶ月ぶりに使うアイゼンとバイルには丁度良い足馴らしとなった。

ルート自体は4ピッチしかなく、3時間くらいでトップアウト。

 

 

◆12月8日 八手岩正面壁 左ルート

次は北大OBペアと一緒に八手岩へ。ホワイトアウトに近いコンディションでも突き進むローカルクライマーはやはり心強い。

ここカミホロでは、取り付きまで真っ白ということも良くあるので、何回も通って土地勘を養わなければ正しいルートに取り付けない事も多い。

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1ピッチ目アンカー

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ルートは4ピッチ程度で、1ピッチ目の一番傾斜の強い部分が核心だが、要所に残置支点もある。しかし基本的にプロテクションの取れる摂理はほとんどなく、ペッカーやイボイボをぶち込む事が多い。核心部はシビアな部分もプロテクションがペッカーという事もあり、リードするには”カミホロ慣れ”が必要そうだ。

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稜線上に出たらクライマーズライトに大きくトラバースしたり、懸垂下降を交えて登山道に合流。-20℃、爆風の中下山。

 

10:30取り付き 15:30トップアウト

 

 

◆12月9日 カミホロ本峰正面壁右クーロアール

寒さやアックス感覚も徐々に取り戻し、いよいよカミホロ本峰正面壁へ。

ルートは右リッジ。相変わらずの冷え込みで−26℃に爆風というコンディション。カミホロのルートはどこも4ピッチ以下と短いが、このコンディションではこれぐらいで丁度良い。フォロワーにはアイスアックス特有の痺れ(通称イタイイタイ病)と極寒のビレイに耐え凌ぐ忍耐力が必要だ。正面壁には全くといっていいほど残置のプロテクションもない。

 

今回、カミホロは取り付き前に、我々に試練を与えてくれた。目標のルートに取りつくには、雪壁を1ピッチ右にトラバースしなければならないのだが、リードしていた板橋さんがゆっくりと落ちていった。幸い、打っていたペッカーが効いて15m程スライドされ止まったが、先が危ぶまれた。

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↑破断面は70センチ程
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何とか取り付いたルート上でも強風と、プロテクションに乏しいクライミングに悩まされつつ、日没前にはトップアウト。

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しかしカミホロはトップアウトしてからがまたキツい。−26℃で爆風の中、稜上を1時間以上歩かないとならない。加えて、いつもホワイトアウトしているので、落ち着いて地図を確認する事が必要だ。まさに総合力を問われる山である。

 

 

◆12月15日〜16日 カミホロ本峰正面壁コップ上ルート〜三段ルンゼ継続

今回は、年末の利尻西壁を意識し、テントや食糧、ガスなどの全装備を背負っての継続登攀を計画した。

1日目、先週の雪崩がチーム皆の頭を過ぎりながらも、今度は左に雪壁をトラバースして行く。またも板橋さんが、少しでも取れそうな溝にはペッカーを打ち込みつつ、進んで行く。今回も雪の状態は気持ち悪かったが無事に取り付きまで。

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ピッチ数は4ピッチ程度だが、自分の担当のピッチでルートファインディングを誤り、良いアンカーを見つけられず、かなり時間を食ってしまう。苦し紛れにクライムダウンしてペッカーとトライカムでアンカーを作り、最終ピッチをDZさんにお願いする。最終ピッチのビレイ中は人生で最も寒く、厚手のビレイパーカーを二枚重ねで着ても尚凍えていた。真っ暗ななか、セロトーレのようなエビの尻尾の弱点をうまく付き、頂上稜線へ抜けた。知らない山の、弱点を付くというのはやはり難しい。しかもスクリューは全く効きそうにないので、プロテクションをいつ取れるのかという不安に勝たなくては登れない。DZさんからは色々学ばせていただいた。

爆風の中、何とか避難小屋まで歩ききり、就寝。明日の北西稜下降と三段リッジ登攀に備える。

 

2日目、やはり視界のない中下降路を探し、クライムダウンスタート。悪い箇所も時折り出でくるので、確実に降る。

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北西稜を登るクライマーとすれ違いつつ、三段ルンゼ取り付きへ。1ピッチ目、左の岩にトライカムを効かせて小滝を乗っこす。ヒマラヤ・ジャヌーなどの経験もある板橋さんが流石の安定感とスピードで超えた。自分だったらあれ程早くは通過出来なかっただろう。とても勉強になる。

そして次は自分のリード。プロテクションを全く取れずに緩傾斜の氷を15m程登るとやっとカムの赤が決まる岩が見つかる、と、上からサッカーボール程の落石が落ちてきて、あのクーロアールには行きたくなと思ってしまう。北西稜パーティーも多かったので、落石があるのだろう。と次の弱点を探して、雪壁を直上して行くと、セロトーレのような大除雪に阻まれる。この除雪が終われば簡単な雪稜が見えるだろうと高を括っていたが、除雪した先は何とスッパリ切れている。仕方なく、近くにあった溝でトライカム2つでアンカーを作り、リードを代わってもらった。登るべきルートは、落石のあったクーロアールの方だった。

 

自分のミスもあり、北西稜に出たところで下山を開始、全装を背負っての登攀は、非常に濃厚なトレーニングになった。

 

◆12月23日 カミホロ 八手岩北東壁サンドウォール 開拓?

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ルート図↑ 別日撮影

 

 

いよいよ利尻の一週間前、今回は八手岩のあまり記録がない面の弱点をつないで行く。

1ピッチ目、予想以上に壁は脆い。砂をカチコチに冷凍保存したような状態で、アックスも弾かれる。ランナウトに滅法強いDZさんがここを慎重に超える。関東から来た自分には、こんなところをリードする度胸はなかった。というより、ボロボロすぎて登る対象とも思えない。北米のクライマーが見たらもっと驚くだろう。ここでも北海道、カミホロで育ったクライマーの強さを目の当たりにする。

 

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2ピッチ目、傾斜の強い砂壁をノープロで超えた後、悪いトラバースをこなしてV字上の岩の弱点を攻める。プロテクションはペッカー中心。

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3ピッチ目、クライマーズレフトから岩を回り込むように登り、溝を辿る。

 

4ピッチ目、最大70度程度の雪壁をガシガシと登り、コルに突き上げたところでアックスを使ってビレイ。〜下降

 

下山後、利尻を想定してイグルー作成。初めてにしては上出来だったか?

反省点は、

・小さな隙間でも、それが風の通り道となり、かなり不快になってしまう。

一つ一つのブロックを大きくし、その隙間を埋める事が大切。

・掘り始めのスペースは100cm x 100cm程度で充分。下を広げていこう。

実際に一泊してみて、外の爆風と比べると相当快適な夜を過ごせた。

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年末の利尻前にみっちりとカミホロで鍛えられた。アプローチも駐車場から1〜2時間と短く、これ以上に適したアルパインのトレーニング場は世界的にも珍しいだろう。

気象が荒く寒いので、中々「楽しみで」行きたいとは思えないが、今後も通い続けたい。

 

(写真提供一部:板橋さん、羽月さん)